廃墟好きにはたまらない!屋根のないサン・ガルガーノ修道院

美しすぎる廃墟 サン・ガルガーノ修道院

Abbazia di San Galgano

San Galgano 1

サン・ガルガーノはトスカーナ州シエナ県キウズディーノにある、カトリック教会シトー派の元修道院です。なぜ「元」なのかというと、現在は廃墟となっており、修道院としての機能は果たしていないからです。一時期は完全に放置されていましたが、その歴史的背景は保存するに値し、現在はアカデミックな研究も進んでいます。そして何よりも、その美しさによって国内外から訪れる人が後を絶たないのです。

この修道院は、1181年に亡くなった実在の人物、聖人ガルガーノに捧げるものとして1218年に建設が始まり、70年後の1288年に完成しました。トスカーナ地方最古のゴシック建築と言われています。


サン・ガルガーノ修道院の歴史

まずはこの修道院がどのようにして生まれ繁栄し、そして衰退していったのかをみていきましょう。簡単にではありますが、時間軸に沿って解説します。
詳細を表示するには下記の各項目をクリックして下さい。

サン・ガルガーノの聖剣伝説
モンテシエピ礼拝堂の誕生
サン・ガルガーノ修道院の誕生と衰退

サン・ガルガーノ修道院の所在地

to-san-galgano-mapサン・ガルガーノ修道院はシエナから南西へ33km、キウズディーノという小さな街の中にあります。街とはいっても修道院自体は、周りにひまわり畑しかないような中にポツンと建っています。
ここへ向かうには車で行くのが一番です。60km圏内には、モンテプルチアーノ(ワインの名産地)やサン・ジミニャーノ、シエナなど見どころが多いのと、先述したように修道院の周りは畑しかないような場所なので、電車もなく、バスは運行していますがそう多くはないからです。(行き方に関しては最後に詳しく説明しています)

私はローマから車で、先日アップした記事「滅びゆく天空の街 チヴィタ・ディ・バーニョレージョ」へ寄ってから、1泊の予定でこのサン・ガルガーノへ到着しました。実はサン・ガルガーノ修道院の目の前には、小さいアグリツーリズモ(農業型宿泊施設)があり、ここへ泊まれば時間毎に変わりゆく修道院を好きなだけ堪能できると踏んだのです。この計画は大正解でした。


夕日に染まる修道院

PA082163チヴィタに寄ったこともあり、サン・ガルガーノへ到着したのは日没寸前の夕暮れ時でした。
この瞬間を逃したくなかったので、ひとまず車をアグリツーリズモの駐車場へ停めて、修道院へ向かいます。
写真は修道院側から撮った糸杉の並木道と、ちょっと見づらいですがその先にあるアグリツーリズモ。この間徒歩1分という距離に、否応なしに気持ちが盛り上がります。
この日の夕焼けもイタリアのそれらしく、オレンジピンクに美しく染まっていました。

PA082143夕日に染まる大聖堂のファサード。窓から空が見えるので、屋根がないことがすぐに確認できます。ゴシック建築の特徴である尖塔アーチもありません。

PA082165残念ながらこの時間はすでに閉館していて、中に入ることはできませんでしたが、ファサードの中央ドアを挟むように2ヶ所、柵だけのドアがあって中を覗くことができました。大聖堂の両サイドにある側廊と、中央となる身廊も少し見えました。中を見る楽しみは明日へ取っておくことにして、修道院の周りを回ってみることにします。

PA082146ファサードを正面にした右サイド。大きな明り採りの窓にはガラスもなく、その装飾も朽ちています。手前の庭はきれいに整備されていて、廃墟とのコントラストが何とも言えません。

PA082157ファサードの反対側、かつて祭壇があった後ろ正面です。こちらサイドには尖っている屋根の一部が残っていました。修道院は入口を西側に、祭壇を東側に作るのが通例です。祭壇の後ろから朝日が差し込むように出来ているのですね。こちらサイドの窓が多くて大きいのにはそういった理由があります。

PA082159修道院の周りをゆっくりと一周し終わった頃には、日が暮れはじめていました。
アグリツーリズモへのチェックインと夕飯を済ませるために、一旦修道院を離れます。


夜の修道院

お腹いっぱいになったところで、散歩がてらまた修道院へ戻りました。
夜になると修道院はライトアップされ、暗闇の中で光を放ちます。ライトは結構強いものなので、修道院周りはとても明るいです。
この周辺は本当に何もなく、人も少なく、1時間ほどウロウロしてた間に出会ったのは、同じように写真を撮りにきたイタリア人1名と、パトロールに来たパトカー1台のみで、後は常に静けさに包まれていました。聞こえるのは鳥かなにかの鳴き声だけで、それもまた情緒を引き起こさせます。今回はシーズンオフの10月に訪問したので、夏のバカンス時期に来たらまた違うのかもしれませんね。

San Galgano 2ライトは下や中から照らされていて、外壁の上部には石の凹凸によって陰影ができてました。写真では伝わりきらないと思いますが、言葉にならない迫力でした。

PA082189ふと見ると、装飾が残っている窓が1つだけありました。花のような模様が丸で縁取られていて、その下に柱が伸びています。ここにはどんな窓ガラスが埋め込まれていたのでしょうか。

PA082184先ほど覗いたファサードの柵をまた覗いてみました。中世の時代にタイムトリップしているかの様です。フード付きのガウンを着た修道士がランタンを持って歩いてきても不思議ではないような気がしてきます。
ここは大抵日没と共に閉館してしまうので、夜には中に入ることができません。ライトアップされているので是非見てみたいところですが、そこはルールに従うしかないので残念ですが諦めます。ですが、夏の間には夜にコンサートやオペラが催されているようなので、その時期を狙ってきてもいいかもしれません。


朝霧に包まれた修道院

朝起きてみたら、辺り一帯が霧に包まれていました。イタリアは10月から雨季に入り、朝方に霧が発生しやすくなります。これは嬉しいサプライズでした。

PA092193写真はアグリツーリズモから修道院を撮ったもの。手前はひまわり畑で、この時は夏の収穫をすでに終えて土を均してある状態でした。

PA092197修道院へ向かう糸杉の並木道の途中で、直系50cmはありそうな立派な蜘蛛の巣に、霧によってついた水滴が真珠のように連なっているのを見つけました。市街で生活していると全く目にすることのできない光景ばかりで、あちこちで止まって写真を撮りつつ、修道院へ向かいました。

いよいよ待ちに待った大聖堂の中へ向かいます。ファサードから右手に周り、大聖堂から伸びている建物のひとつがチケットオフィスです。入場料はたったの€2。朝一番に来たので、チケットオフィスの人に大聖堂への入口を開けてもらいました。
PA092202念願の大聖堂内。まずは柵越しに見ていた側廊です。昨夜とは打って変わって、霧があるので柔らかな印象です。
屋根がないので、内側ですけど外です。草も生えています。

そしてとうとう真打ち登場です。これは入口側から祭壇側を撮ったもの。霧の中、東に向いているので朝日の光が当たって幻想的です。
屋根はみごとにありません。両サイドの柱からは、アーチ型の天井を支えていたと思われる様子が分かりますが、その先には空が広がっているだけです。

PA092218祭壇側から入口側を撮った写真です。人が立っているので、その大きさが分かると思います。
祭壇用のテーブルがありました。上に乗ったり、物を置いたりしないよう注意書きがあったのでオリジナルかもしれません。
平日だったこともあり訪問する人が少なく、貸し切り状態でした。思う存分堪能することができました。


シトー派とゴシック建築

シトー派は、6世紀に発足したベネディクト派の影響を受け、11世紀終わりに誕生しました。イエス・キリストの教えに則した教義を信仰しています。それは質素な暮らしをしながら祈りを捧げ続けるという、日本の仏教で言えば曹洞宗のような、戒律がとても厳しい宗派です。
それは建築にも現れていて、金や彫刻、フレスコ画、大理石で飾り立てるような事はせず、シンプルで壮大な石造りの様式です。カトリックの総本山であり、煌びやかなバチカンのサン・ピエトロ寺院とは真逆と言えます。

そしてゴシック建築は12世紀のフランスに始まり、高い天井と柱、尖塔アーチ(アーチ型の天井)と、柱から続く交差ヴォールト(アーチ型の天井を支える木の枝のような部分)、そして大きな明り取りの窓があるのが特徴です。

ちなみにサン・ガルガーノ修道院をデザインしたのはヨハンネス・ドンヌスと言われています。彼はラツィオ州にあるシトー派のカサマリ修道院のデザインを担当した人です。

casamari 600こちらがカサマリ修道院。サン・ガルガーノ修道院とどことなく似てますね。アーチ型の天井でクロスしているのが交差ヴォールト。これは美しいだけではなく、構造力学的にも合理的で、天井を支える力を4つの点に分散させることで強度が増すようです。
しかし残念ながら、サン・ガルガーノの大聖堂にあった尖塔アーチと交差ヴォールトは、屋根の崩壊と共になくなってしまいました。ですが、このサン・ガルガーノ修道院に関して言えば、屋根がないところが良さでもあり、他には無い美しさを醸し出していると思います。

事実、ここはいくつかの映画のロケ地として使われています。


  • 戦士の休息(フランス)1962年
    ロジャー・ヴァディム監督 ブリジット・バルドー主演
  • Maestro Elementare, Prativamente Nudista(イタリア)1975年
    フラヴィオ・モゲリーニ監督 ロナート・ポッゼット主演
  • ノスタルジア(イタリア・ソビエト連邦)1983年
    アンドレイ・タルコフスキー監督 オーレグ・ヤンコフスキー主演
  • イングリッシュ・ペイシェント(アメリカ)1996年
    アンソニー・ミンゲラ監督 レイフ・ファインズ主演

この中でもサン・ガルガーノ修道院を有名にしたのは、タルコフスキー監督の「ノスタルジア」ではないでしょうか。

彼独特の暗うつな映像美が、この朽ちた修道院の姿とピタっと相まっています。日本語版にもなっているので、ご興味ある方は是非。


モンテシエピ礼拝堂

もうひとつ忘れてならないのは、モンテシエピ礼拝堂です。礼拝堂は修道院から続く丘を上がったところにあります。道が雨などでぬかるんでいなければ、修道院横から続いている未舗装道路を登っていくと5分ほどで到着します。
車で行くこともできます。アグリツーリズモから出た通りをまっすぐ行って、1つ目を右に曲がり道なりに行くとすぐです。駐車場も完備されています。

Rotonda inside

礼拝堂の入口です。奥に祭壇が見えます。右手の柵のところには聖剣が透明のプラスチックに覆われて保存されていました。

PA092258丸い形の礼拝堂の内装も丸でいっぱいでした。天井には白と茶色のストライプが円を描いています。見上げていると目が回りそうになるくらいです。礼拝堂はとても小さく、このメインの部分と、入って左手に増築された更に小さな礼拝室があるくらいでした。

Spada_dell'Abbazia_di_San_Galgano,_1986photo by Paolo Dalmasso

これが聖剣伝説となった、ガルガーノの剣です。
確かに岩に刺さっています。透明なプラスチックで保護されているので触ることはできません。先述したように、ある研究によって12世紀頃のものであることは確かなようです。ですが、事実は闇の中ですね。

PA092254ここには小さな住民達がいました。
ネコです。
礼拝堂内を縦横無尽にウロウロしています。この黒猫は祭壇の聖書の前が気に入っている様子でした。
聖猫伝説のはじまりかもしれません。


サン・ガルガーノに泊まる

Agriturismodi San Galganoサン・ガルガーノ修道院が目的で泊まるのならば、この歩いて1分ほどの距離にある、アグリツーリズモ・サン・ガルガーノが絶対的にお勧めです。
小さいながらも清潔で、レストランやバーも併設されているので、困ることは何もありません。
スタッフの方々もとても気さくでフレンドリー。言葉が多少通じなくても、全く問題なさそうです。


Agriturismo San Galgano
アグリツーリズモ・サン・ガルガーノ

清潔なベッドルーム。サン・ガルガーノ修道院が窓から見える部屋もあります。併設のレストランは、もちろんトスカーナ料理。土地の食材を使って、新鮮な料理を出してくれます。大きなフィオレンティーナもあるので、本場の味を試したい方にはお勧めです。ワインも豊富に揃っています。
嬉しいことにこのアグリツーリズモ、かなり安く泊まれます。1部屋の値段は2人で€44〜。駐車場は無料。フリーWi-Fiも完備しています。


サン・ガルガーノへの行き方

サン・ガルガーノとシエナ間にはバスが1日に1本か2本発着している以外には、公共交通機関で向かう方法がありません。できればレンタカーで行かれるのが1番です。運転しない方や、海外での運転に慣れていない方には、少し高額にはなりますが、プライベート送迎という方法もあります。
以下にまとめましたので、各項目をクリックして詳細を確認してください。

Tiemme S.p.A社のバス
レンタカー
プライベート送迎

開館時間と入場料

サン・ガルガーノ修道院

開館時間:
11〜3月 9:30〜17:30
4〜5月&10月 9:00〜18:00
6月&9月 9:00〜19:00
7月&8月 9:00〜19:00
入館料:大人 €2 / 子供・シニア €1.5 / 0〜5歳 無料
*子供6〜18歳 シニア65歳以上


モンテシエピ礼拝堂

開館時間:夏 9:00〜18:30 / 冬 9:00〜18:00
入館料:無料

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koto

投稿者プロフィール

2010年イタリア人との結婚を期にローマに移り住む。趣味の写真が高じてグラフィックデザインを独学で学び、フリーランスとしてちょこちょこ活動中。アート、音楽、猫が大好き。旅に役立つ情報はもちろん、イタリアで生活する上での有益な情報を発信していきたいと思っています。日本ではあまり知られていないイタリアの魅力をお届けできたら嬉しいです。

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