日本と全然違うイタリア人にとってのサッカー

イタリア人にとってサッカーとはなんなのか

イタリアといえば、世界中から指折りの実力を持つ選手が集まる世界最高峰のプロサッカーリーグ、セリエA

ACミラン、ローマ、ユヴェントス、インテル、ジェノアなど、長い歴史のあるプロサッカーチームが毎年スクデット(リーグ優勝)を賭けて白熱の試合を繰り広げます。熱狂的なファンにとってもシーズン中は命がけ(笑)。毎週試合の時間になると近所から罵声やうなり声、ゴールを入れた瞬間などには轟きのような奇声、ラッパを吹きならす音、車のクラクションがあちこちから聞こえてきます。初めはあまりにも激しいので、正直びっくりしてしまいましたが、もう随分慣れてしまいました。ここまで熱狂的ファンになれるスポーツを持つイタリア人男性が本当に羨ましいです。

今回はイタリア人にとって、サッカーとは一体何なのか?ということを私なりに考察してみたいと思います。

応援チーム=自己アイデンティティ?

『サッカーとは自己のアイデンティティー、思想を投影するスポーツである』とはよく言ったもので、私が2003年にイタリアへ移住して、一番びっくりしたことは、サッカーに対する熱狂度、愛情もさながら、多くのイタリア人男性が自分の応援するサッカーチームに自己のアイデンティティーや思想を重ねているところです。

例えば、ローマには、ローマを本拠地とするAS Roma(通称ローマ)とS.S. Lazio(通称ラツィオ)という二つのチームがあります。同じローマに生まれ住んでも、ローマファン、ラツィオファンは全くタイプが違います。

長年この土地に住んでいると、「あ、この人はローマファンだな」とか、「彼はラツィオファンに違いない」ということが感覚的に分かってくるのですが、「感覚的」というところがみそで、数で言えばローマには圧倒的にローマファンが多数で、ラツィオファンはどちらかというと、ローマと言うには少し距離的に遠いローマ近郊の町の住民や、ローマ市内に住む少しスノッブな人々が大多数を占めているような気がします。

確かに、ローマで生まれ育った生粋のローマっ子にしてみれば、ローマファンであることは自然なのかもしれませんが、「私はローマ出身です」と言うにはちょっと田舎者(?)の人々にとってみれば、ネーミングからして広範囲を扱うラツィオファン(ローマはラツィオ州の州都です)になるのも自然な流れなのかもしれません。

両チームではファンの服装や政治的思想の傾向も少しずつ変わってきます。ローマはどちらかというと左派、服装もカジュアル、一般的な階級のローマ市民が多いのが特徴で、代わってラツィオファンはどちらかといえば右派、服装はキレイめ、少し階級が上のローマ市民が多いという傾向があります。もちろん、両チームのファンはいつもいがみ合っています・・・。ダービー戦などで、負けた方のチームのファンは翌日会社や日常生活の中で相手側チームのファンに向ける顔がないので、いつもしょぼんとしています。分かりやすいですね。逆に勝った方のチームのファンは意気揚々、相手チームを馬鹿にする発言を繰り返します。こんなことが毎日繰り返されるのがイタリアという国です。

何故そのチームのファンになるのか

ローマ サッカーボール多くのイタリア人のサッカーファンに「何故●●チームのファンになったの?」と聞くと、高い確率で帰ってくる答えが「お父さんが●●チームのファンだから。」というもので、多くのファンは世代を超え、父親、さらには祖父の代から代々家族の伝統として引き継がれています。家族全員同じチームのファン、というのはイタリアでは普通のことで、父親や祖父がクリスマスプレゼントや誕生日プレゼントに息子や孫にその家族がサポートするチームのグッズやプレゼントをする光景も嫌という程よく見られます。そのチームのファンである、ということは、家族の伝統であり、自分が育った環境を思い起こされる個人のアイデンティティーとなっているのです。

上の写真は、祖父の代からローマファンの家庭で育った私の甥っ子(イタリア人と日本人のハーフ)に、彼の父親が買い与えたローマのサッカーボールです。イタリアの子どもたちはみんなこういったプレゼントを受け取りながら育っていきます。

チームへの応援は郷土愛の表れ!

ローマ サポーター クラブまた、そのチームを応援するということは、チームが所属する都市、要は自分が生まれ育った街への郷土愛を表現する、ということでもあります。例えば、ローマファンであれば、自分たちの生まれ故郷、ローマという古代都市への深い愛情、ローマ人であるということへのゆるぎない誇りと自信を、ローマというチームを応援することで表現する、とでも言うのでしょうか。勝敗がこんなに重要なのは、ただ単にゲーム的な要素からだけではなく、自分たちのローマ人としてのプライドをズタズタにされる、ということなのです!!

それは、どこのチームのファンでも同じことです。同じような家族背景や郷土愛を持って心底チームを応援していますから、自分の応援するチームが試合に負けようものなら、自分自身がこきおろされたような悔しさ、惨めさが込みあげてくるのです!!そりゃあ必死になりますよね。笑)よく試合中に、白熱したファンが「だからお前はダメなんだ!!!」とか、「なんでお前はいつも同じ所でコケルんだ!!!」とか「お前にかあってるんだ!!グズグズするな!!」など失敗した選手に対して叫んでいる姿を目にしますが、その姿はまるで、「ダメな自分」、「出来ない自分」に対する日頃の行きどころのない怒りを投影しぶつけているかのように見えることもあります。

上の写真は、ASローマの発祥地、テスタッチョの市場近くのサポーターズクラブです。イタリア全国各各地に点在するサポーターズクラブは、熱狂的なサポータが集う場となっています。このようなクラブ内では日々熱いサッカー論がサポーターによって繰り広げられます。

セリエAを見に行こう!

というわけで、今回はイタリア人にとって、サッカーというスポーツがどんなに大切なものか、イタリア人にとってサッカーがどういうものか、ということをイタリア在住者の視点から考えてみましたが、このような視点でイタリアサッカーを見つめてみると、ちょっと面白くないですか?

ただ日本人選手がいるから、という理由だけでセリエAの試合観戦に行くのではなく、現地の人がどのようなことを思いながら試合を観戦しているのかをご自分の肌で感じながら、試合を観戦してみてくださいね!きっと、ハッとする瞬間がいくつもあることだと思います。

rika

投稿者プロフィール

2003年イタリア人と結婚後イタリアに移住。日本とイタリアでテレビ業界並びに現地企業でのエグゼクティブ・アシスタントの仕事を経て、独立。現在はフリーランスで様々な分野のコーディネーターとして活躍中のフォルミカ理香です。イタリア語、スペイン語、英語堪能な帰国子女。旅行、食べること、ルブタンの靴が大好き。ちょっと可愛いユニコーンのアイテムをコレクションしています。現地在住ならではのディープなイタリア情報を発信中。

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