イタリア本場のモンテッソーリ教育とは
連載第一回目、第二回目を通して、モンテッソーリ教育との出会い、そして私が「幼児教育」という世界の扉を開けるまでの経緯、東京でのモンテッソーリの0歳から3歳まで「Assistant to Infancy AMI(国際モンテッソーリ協会)国際コース」での学び、そして卒業後にモンテッソーリ教師として働き、その後ロンドン、ローマと住む土地を移すことになった経緯をお話ししました。この連載第三回目では、その後イタリアで結婚することとなったいきさつ、イタリアで見て感じて実際に体験した本場、イタリアのモンテッソーリ教育についてお伝えいたします。当初は、全三回の連載を予定していましたが、思ったよりも長文となったため、四回の連載に変更となりました。もうしばらくお付き合いください。
ロンドンでのモンテッソーリ・スクールの立ち上げを終え
いざローマへ!
いざローマへ!
ロンドンで2年が過ぎた頃、当時東京で働いていたひとつ年上の姉がイタリア人と結婚し、ローマに移り住みました。私はロンドンでの仕事や生活にも慣れ、ちょうどまたイタリアに旅行で行きたいな、と思っていた矢先でしたので、姉を訪ねてクリスマスの時期にローマを訪れることにしました。
ローマへと旅した私を待っていたのは、現在のイタリア人の夫との思いがけない出会いでした。クリスマスイブの夕食会で現在の夫と出会ったのですが、それは、予想もしない出来事でした。星がとても美しい夜でした。運命というのは神秘的なもので、偶然が幾つも重なったかのような不思議な出会いでした。
彼はその日はもともと別の予定があったのを急遽変更してその夕食会に参加していたのです。そして私といえば、ローマに住んでいたわけではなく、ロンドンからの週末の短期間の訪問中でした。この出会いは多分、必然的な出会いだったのでしょう。
その後、春にはプロポーズを受け、今度はイタリアでの結婚へ向けてすべてがドミノのように動き出しました。「すべての道はローマへ続く」と言いますが… まるで自分ではコントロールさえ出来ない大きな人生の渦に巻き込まれるかのごとく、私の人生はローマへ運ばれていきました。
翌年、ローマ旧市街の13世紀築の美しい教会で家族と世界中から集まった友人たちの祝福を受けながら私たちは結婚しました。それから間もなく、ローマで元気な男の子を出産。モンテッソーリ教育に感銘を受けるきっかけとなった、かつての恩師の住む町、ローマで私は母になったのです。
イタリア発祥モンテッソーリ教育の由来、歴史について
イタリアの切手にもなったモンテッソーリ博士:Wikipediaより
話は変わりますが、『モンテッソーリ教育』は、イタリア発祥の教育法として知られています。今から100年以上も前に、イタリア初の女性医師となったマリア ・モンテッソーリ博士(1870~1952)が考案された教育メソッドです。当時からローマで医師として精神病院で働いていたモンテッソーリ女史は、知的障害児へ『感覚教育』を施し、劇的に彼らの知的水準を上げるという効果を成し遂げました。
そして、1907年にローマの貧民街サン・ロレンッオにて「Casa dei Bambini(子供の家)」を開き、その教育法を世界が知ることになりました。現在既に100年以上の歴史を持ち、世界各地で盛んに実践され、その効果が立証されています。
モンテッソーリ教育を受けた世界の有名人
モンテッソーリ教育を受けた著名人は世界中に沢山いらっしゃいます。
例えば、誰もが知るあの大企業グーグルの共同創立者であるラリー・ページとセルゲイ・ブリン。彼らは自身のインタビューで成功を収めた背景にはモンテッソーリ教育を受けた影響が大きかったと述べています。決められたルールや秩序にとらわれず、世界で今何が起きているのかを追求し、「何か人と違うことをしてみようかな」と自分で積極的に考えるということを幼少期に学んだと語っているそうです。
その他、アマゾン創立者のジェフ・ベゾスもモンテッソーリ教育を受けて育ちました。彼は、自分が何をすべきか若い頃から明確なビジョンを持っていたそうです。
その他の有名人では、マネージメントの父と言われた経営学者のピーター・ドラッカー、フェイスブックの創立者マーク・ザッカーバーグ、ウィキぺデイア創立者のジミー・ウェイルズ、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、ゲームソフト開発者のウィル・ライト、世界的チェリストのヨーヨーマ、アンネの日記で有名なアンネ・フランク、自ら教育者であったヘレン・ケラーなど名をあげればきりがありません。最近では英国王室のウイリアム、ヘンリー王子などもモンテッソーリ教育を受けたと報告されています。
またここで一言申し上げておきたいこともあります。モンテッソーリ教育はいわゆる「エリート教育」ではありません。上記に挙げた方々は、その名を知られる一握りの著名人たちで、実際にはその他星の数ほど多くの素晴らしいモンテッ子たちが世界中で大勢活躍しています。自分の大好きなものに出会えて、それに心底集中でき、内面から満たされ自分の幸せを生きる人々。彼らは自分のエゴだけではない、他者や環境、地域、社会や世界のために自分の能力を差し出せる新しい世代です。
日本では残念ながら、文科省が小学生からのモンテッソーリ教育実施を認可していません。日本の教育制度は完全に暗記のためにあるといってもいいでしょう。全国一斉に同じ教科書で、右に倣えの授業を受けます。暗記をしてテストでいい点を取ったものが「優秀」とされる教育です。当然ながら、競争が芽生え、協力とは程遠い社会的な自主性や主体性が全く育たない教育方針です。最近では、藤井四段が異例の天才児と騒がれているようですが、彼もまたモンテッソーリ教育を幼児期に受けています。自分の大好きなものをとことん追求して、満足するまで繰り返せる環境が幼少期にあったのだと思います。
彼らに共通するのは、『失敗を恐れないこと。』モンテッソーリ博士は失敗を「ミスター・ミステイク」と呼びました。なぜかというと、失敗こそが私たちに多くを学ばせてくれる賜物だからです。
モンテッソーリ教育の真の目的
モンテッソーリ教育メソッドの感覚教具一例:著者撮影
モンテッソーリ教育の真の目的は、それぞれの発達段階にある子供の生命を援助し、自立した「強くて優しい」人間を育てることです。モンテッソーリ教育では、一個人はこの宇宙の中の地球という星に生まれ、それぞれが大切な使命を持っていると考えます。その自分の使命へ出会っていくこと。教育はそのためのお手伝いである、と考えます。
「自分の頭で考え、責任を持って自分の幸せを生きる自由で新しい人間を育てること」がモンテッソーリ教育の真の目的なのです。責任感と思いやり、他者や環境への配慮があり、生涯学ぶ姿勢を持つ人間を育てること。これらを追求すると、世界平和や調和に行き着きます。そのために子供を科学的に観察し、そこから得た事実に基いた教育法を構成し、独特の「コスミック教育」と呼ばれる教育体系を持つ素晴らしいマテリアーレ(教具)を開発しました。
特に「感覚教具」は素晴らしい科学的な教具です。子供の発達の段階に応じた興味を、深く自分のペースで体験できるように考えられています。現在の脳科学、生理学、心理学、文化人類学、教育学などがそのベースにあるのです。そんな魅力溢れるモンテッソーリ教育発祥の地、イタリアで本場のモンテッソーリ教育に携われることは大変貴重な体験です。
考えてみれば、世界にはたくさんの文化や考えて方があり、言語があります。でも、子供の成長は普遍なのです。どの文化の子供も同じ発達段階を経て、大人になって行きます。言わば、どの人にとっても、幼児期というのは、人生を支える大切な土台なのです。
つづく・・・
ミラノで働くAikaさんのモンテッソーリ教育との出会い、実践、モンテッソーリ教育の真の由来、歴史、真の目的、また彼女の現地での生活を全4回の連載としてお届けしています。最終回のつづきは10月頃更新予定です。お楽しみに!
前回までの連載
第一回目:イタリアで働く日本人:ミラノでモンテッソーリ国際教員として働くまで
第二回目:イタリアで働く日本人:イタリア発祥のモンテッソーリ教育を世界で学ぶ
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