イタリア人にとって靴とは?

イタリア人にとっての靴

皆さんこんにちは!今日はちょっといつものイタリアの教育の話から趣向を変え、イタリア人と日本人の靴に対する考え方、ファッションの捉え方の違いなど「靴」についてちょっとお話をしたいと思います。

イタリア人のファッション感覚と靴

イタリアは芸術の国、美的感覚のとても洗練された国です。イタリア人は、「暮らしの中で美意識を磨く」ことを自然体で実行していて、実はこの感覚は、子どもの教育にも取り入れられています。装いを「生き方のスタイルの一部」と捉えて、自己表現の方法として表現するのがイタリア人ですが、それはファッションをトータルとして考える、ということで、日本人には想像しにくいでしょう。イタリア人にとって、頭の上から足の下まで全て整って、はじめて「ファッション=モーダ」なのです。

その感覚は、こんなところにも現れています。イタリア人は家の中でも靴を履く人々です。ですので、靴を脱ぐことに少なからず抵抗を覚える人が多い印象を受けます。これは、靴を脱いだ瞬間に、そのファッションとしての全体のバランスが崩れ、「自分のその時のファッションがトータルではなくなる」という感覚が少なからずイタリア人にはあるからではないかと思います。

また、美意識という点で言うと、イタリア人の家に行けばわかりますが、その家庭のサイズに見合ったレベルで、どの家もきれいに磨かれていて、清潔感が漂います。今は亡くなった義理母も、その母も、雑巾でさえ、漂白剤をかけて、ピシッと美しい佇まいで管理していました。些細なことですが、これも生活の中に確かに存在する美意識の現れです。生活の中に美意識を基にした静かな秩序があるのです。イタリアで幼児教育に携わる身私から見て、「生活に対する美意識、美的感覚は先ず、家庭で育つものだ」ということをこの国では日常生活の中からも再発見させてくれます。イタリア人の子供たちは、このような環境の中で育つので、美意識が研ぎ澄まされていくのでしょう。

イタリア人女性と靴

特にモードとデザインのお洒落な街、ミラノでは『お洒落は37歳から』と言われます。自分自身を知り、経験値を重ねていくその中に、磨かれていく女性としての成熟さ、寛容さや官能的な美が社会の中で女性に求められることが確立されているからです。

イタリアでは、室内で靴を履いたままなので、イタリアの主婦は、家でも楽なルームシューズを選ばず、コツコツとヒールを履いて、自信を持って立っているイメージがとても強いです。そして家事や育児に疲れたら、代行の家政婦さんやシッターさんの出番です。家族間の密度の濃いコミュニケーションも加わり、うまく言えませんが、自信に溢れていて、幾つになっても女であることを楽しんでいる。ミラノの街ではそんな女性達に多く出会いました。その彼女たちを支える精神の正体こそが、美しさやエレガンスとは何か?という本質を無言で語りかけてくれます。それと同時にキッチンも毎日磨いてピカピカ!という女性がとても多く、暮らしも食もファッションももはや「その人の生き方」なのだと思わずにはいれません。

ちなみに、我が家は日本風に玄関で靴を脱ぐスタイルをとっています。その方が衛星上、清潔だと思うからです。イタリア人の夫も、イタリア人の父と日本人の母を持つ息子も、我が家ではずっとこのスタイルなので自然に日本人に感性が近くなっているような気さえします。

各シーズン子供には靴を3足揃えるイタリア人の親

子供の革靴

子供の革靴(写真はイメージです)

そのような環境で育つ子供たちも、ファッションに関するTPOを幼い頃から自然に身に付けていきます。例えば、イタリアでは、クリスマス、復活祭、洗礼式…etcと、成長の段階でお祝い事があります。この国では、子供服にもちゃんと正装があり、場を選びます。日本も七五三がありますよね。ただ、現代ではきちんと正装をする家庭は少ないかもしれません。イタリアでは、その場に相応しい装いは、同時に自分自身や他者への配慮であり、尊重でもあります。

そんな私も靴好きの一人ですが、ローマで息子が生まれてから、イタリア人の義理母に教わったことがあります。それは「各シーズン子供用に3種類、上質な靴を選んであげなさい」ということです。

一足は、普段着と同じで学校へ通うのに毎日使えるもの。二足目はお出かけ用の正装の靴。三足目は、運動用のスポーツシューズです。それに冬のレインブーツや夏のサンダルも加わり、息子も子供ながらにかなりの靴持ちとなりました。そして、現在は高校一年生(15歳)ですが、今でも、私はその教えを守り、本人の好みを聞きながら一緒に毎シーズン、三足の靴を揃えることが当たり前となりました。ブランドによって、大きさもまちまちですが、一度ここと決めておくと後が楽です。子どもの靴も本当に種類が豊富でデザインが素晴らしいものが多いのが、イタリアだと感じています。ちなみに革靴は、子ども用とは言え結構なお値段もします。ですので、本当に良いものを大切に使う精神は、幼い頃から習慣となれば当たり前なことだと思えるようになりました。そういう文化の風潮や雰囲気の中でイタリア人の子どもは育つので、何が美しいのか?そうでないのか?ちゃんと自分の頭で考え、判断する力や見極める目を学ぶのだと思います。

イタリアの子供靴と日本の子供靴の根本的な違い

革靴

革靴(写真はイメージです)

イタリアの子供靴と日本の子供靴の根本的な違いも興味深いなと思います。恐らく、これは両国の装いに関する感覚の違いに相違点があるように思えます。日本の子ども靴はどちらかと言えば、布製品の柔らかいものが多い印象を受けますが、どうでしょうか?

私自身で言えば、イタリアに住む年月が長くなり、靴はほとんどイタリアで調達していますが、日本に一時帰国をした際に、日本の靴をプレゼントされることがあります。とても嬉しいのですが、実は日本の靴は底が薄くて、イタリアの石の街では特に冬場は寒い気がします。石畳の町並みには、石畳の町に合った、独自の靴文化があるように感じるのです。

石畳の街イタリアでは、子ども靴のメーカーも、生理学的に研究された子どもの足の正常な発達を促すことに重点を置いてデザインされていると思います。各メーカーの違いはあるものの、どこも必ず革製品を使用するのが一般的です。布の靴はあまり子供には使われず、夏場のサンダルか、学校などで使う室内履きとして使われることが多いですね。

また逆にイタリアは、夏のサンダルも革製品が主に使われますが、日本の暑い夏には蒸してしまうようにも感じました。最近はアメリカからプラスチックのゴムのような? サンダルも入って来ています。これらはイタリア人は街で履く人は少なく、海でのバカンス用に使う場合がほとんどです。

たかが靴、されど靴

いかがでしたか?たかが靴、されど靴。靴を見るとその人がわかる、と言います。今回は、そんなことを考えながら、カラッとした地中海性気候と、湿度の多い日本の気候で必要とされる靴の違い、その国の文化や風習の違いによる子供の靴選びの習慣の違いなどに関して考えてみました。場所や人々の生活習慣の違いからくる、装いに対する根本姿勢の違いも気になります。家で靴を履く習慣が日本にはないので、靴とファッションはトータルで考えにくいのでしょうか?イタリアは、やはり「ファッションの国」と言われるだけあって、トータルで考えるファッションという概念が、ファッション関係者だけではなく一般の人々にも浸透しているように思えます。今回は、そんなことを私なりの視点で考えてみました。

AikaAMI (国際モンテッソーリ協会) 公認モンテッソーリ国際教員

投稿者プロフィール

AMI (国際モンテッソーリ協会) 公認モンテッソーリ国際教員資格者。2004年にイタリア人との結婚を機にローマに渡る。現在は家族でミラノ在住。現地のモンテッソーリ教育のバイリンガルスクールに勤務する傍ら一児の母親としても奮闘中。思春期からスペイン、 アメリカ、ドイツ、イギリスでの生活経験を通して多文化への造詣も深く、ロンドンではモンテッソーリスクールの立ち上げも行う。英語/スペイン語/ドイツ語/イタリア語が堪能。趣味は写真、アート、旅とグルメ。美味しいものや美しいものが大好きです。母親の視点から見たイタリアの情報も発信していきます。

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