ミラノでモンテッソーリ国際教員として働く
15歳で初めて訪れたイタリア
はじめまして。ミラノ在住のAikaです。
私が生まれて初めてイタリアを訪れたのは、15歳の時でした。まさか今振り返れば、自分がこの国に住むようになるなんて、想像もしていませんでした。クリスマス時期に訪れたローマの肌寒さ、きらびやかなショーウィンドウ、教会の鐘の音。すべてが新鮮で甘い予感のする国、それは直観で「大好きな雰囲気」と感じられるものでした。
当時から、イタリアには何か特別な不思議なご縁を感じていたように思います。芸術や歴史、豊かな文化にアモーレあふれる街、なぜかとてもアットホームに感じました。さて、第一回目は、この国に私が呼ばれた理由をお話しします。
それは突然、訪れたと言えばわかりやすいかもしれません。私は22歳の時に、運命的に『イタリア発祥のモンテッソーリ教育』に出会いました。正確には母がモンテッソーリアンでしたから、幼少期に遡るわけですが、今回は母の目を通してのモンテッソーリ教育ではなく、私が大人になって自分でモンテッソーリ教育を見出すまでのお話をいたします。
モンテッソーリ教育に導かれるまで
ある冬の朝、私は公園のベンチに座っていました。22歳の頃です。当時、私はドイツ留学中で写真の勉強をしていました。そして、そんな中「これからの人生をどう生きようか?」と若者らしく迷っていたのです。
そんな真冬の寒い冬の朝、ミュンヘンのシュワビング地区にある英国庭園にて、友人と朝食をする約束をしていました。その待ち時間に、一人公園のベンチに腰をかけ、「さて、私は将来、何をしたいのだろう?」と考えていました。とても美しく緑あふれる公園ですが、この日は寒い零下の凍えるような朝でした。
真冬の空を見上げたら、そこに突然、一人の子どもが表れて、「君にいいものをあげるよ」、と氷の張る冷たい池に手を入れて、底に落ちていたきれいな天然石を見せてくれたのです。当時の私は写真の道に進むべきか、わからず落ち込む気分でいたのです。私が悲しい表情で沈んでいたのを、この子は察したのでしょう。わざわざ近くに寄ってきて、見ず知らずの外国人の私に、小さなプレゼントをくれたのです。
「ああ、子供ってなんて純粋なのだろう」と感動しました。この石はいまだに大切に保管しています。
この日を境に、「私は写真が大好きだけれど、何を撮っていいのかわからない。」という気持ちはそのまま、写真の授業の一環として一先ず、子どものポートレートを撮ることにしました。ところが、時が経つにつれて「人物を撮るためには相手をよく知らなければ」という思いが募っていきました。そんなある日、実家の母の元にモンテッソーリの0歳から3歳までの学びのお誘いが届いたのです。母は忙しくて行けないというので、それでは私が行ってみよう。「面白そうだな、やってみようかな」と思ったのがすべての始まりです。
恩師との出会いと自分自身の内面の旅の始まり
モンテッソーリの0歳から3歳までの学びというのは、「Assistant to Infancy」 と呼ばれる乳幼児の援助者となるために命の発達について学ぶAMI国際コースのことです。2000年の春、横浜で日本初の第一回目のコースがイタリアからトレーナーを招待して開校されました。
そこで私は生涯の恩師に出会うことになるのです。当時、73歳だった先生はイタリアで著名な精神小児科医であり、モンテッソーリ界では右に出る者はいないと言われていた素晴らしい人格者でもありました。『命が育つ』ということはどういうことなのか、人間が尊厳を持って人間らしく生きるということ、また愛と知恵を伴う教育という一本の揺るがない道筋、大人の役割、生きている目的や使命。ここでは言い尽くせないほどたくさんのことを深く学びました。それは今まで受けてきたどんな教育よりも濃縮されていて、豊かさがぎゅっと詰まったような日々でした。
先生はいつも笑顔で優しいけど、厳しいお方でもありました。いつも背中がピシっとしていて、遠くを見ながら、人生はね、と目を輝かせて語りかけてくださるのです。
『沖から旅立ち、知識の海へと航海を始めた者は、永遠に泳ぎ続けるしかない。いつか向こう岸に辿り着くという希望を持ちながら。』
と言われたこともありました。そんな宝石が散りばめられたようなお言葉を先生の講義ではたくさん頂きました。生きることの素晴らしさは、学び、成長することである、と熱い情熱を持って教えてくださいました。
ここでコースが終わるころに、気が付いたことがありました。子供について学びを始めたはずが、それは「自分自身への内面の旅の始まりであった」ということです。モンテッソーリ教育の軸となる教育心理学を学ぶプロセスでは、最終的に自分自身の言葉でアルバム理論というものを書き上げます。試験は筆記と口頭と実技です。
このアルバムというのは、モンテッソーリ講義の内容を自分の言葉でまとめた生きた教科書です。世界に同じものは二つとないわけですから、一生、手放せないほどの価値があります。モンテッソーリ教育の世界では「卒業論文」に匹敵するようなものと言えば、わかりやすいでしょうか。
このような一連の出来事を通して、自らの幼児期をも振り返りながら、少しずつパズルがはまっていくように深い洞察と気付きを与えられました。真の学びとは、変わっていくことなのです。謙遜さを覚えて、内面が変容していく、そんな素晴らしい体験を授かりました。このような体験は一生の宝です。
ここまでが私のモンテッソーリ教育との出会い、幼児教育という世界の扉を開けるまでの経緯をお話しました。次回は、卒業後に教師として働き始めた頃のお話をいたします。
つづく・・・
ミラノで働くAikaさんのモンテッソーリ教育との出会い、実践、そして現地の彼女の生活を全4回の連載としてお届けしています。つづきは7月に更新予定です。お楽しみに!
次回の連載
コメント
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@Hika Hika様、記事へのコメントありがとうございます!とても励みになります。私の公式HPの方でも、様々なモンテッソーリ関連の最新の情報を綴っていますので、ぜひご覧になってください。また、来月1月には、オンラインセミナーを予定しています。小学校教育にも関連するブルーノ・ムナリとアート教育に関するセミナーとなります。詳細はHPからご覧いただけます。何かHika様の心に届くものがあれば幸いです。今後ともどうぞよろしくお願い致します。 http://aikamariani.com
はじめまして。モンテッソーリ教育の素晴らしさに感銘をうけている小学校教員です。教えると言うことは、自分の学びを深めること。私も指導者として、その考えを大切にしていきたいなと思いました。
@Akiko Akiko様、
はじめまして。コメントをありがとうございます!もうじき第2弾の連載をアップする予定ですのでどうぞお楽しみに!次回は私がモンテッソーリ教育の奥深い世界の扉を開き、その学びを深めていった過程についてお話しする予定です。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
モンテッソーリ教育のお話、とても興味深いですね。次回の投稿を楽しみにしています!
@Koko Hara Koko Hara様
はじめまして。コメント嬉しいです。ありがとうございます!アメリカで子育て中でいらっしゃるのですね。家庭でできるモンテについて、世界中でがんばるお母様に向けて国を超えて支えていきたいという使命から、9/1スタート予定のブログ(www.aikamariani.com)にて私なりのモンテの子育てに関する情報をシェアしていく予定です。今後もぜひよろしくお願いいたします。
アメリカで一歳半の乳児の子育て真っ最中^ ^ ローマのかおりいっぱいの記事に胸が高鳴りました。次の投稿を楽しみにしています!